こんにちは! LL DESIGN JOURNAL編集部のLinaです。
今回はビジネスクラスの方に必要なweb制作業界のビジネスモデルについて、制作会社に焦点を当てた純利益の出し方をお伝えしていきます。
制作会社のビジネスモデル
利益を出す方法(おさらい)
本題の前に軽くおさらいです。
制作会社の利益とは売上から経費を差し引いた数が純利益とされます。
- 売上:サイトの制作費(予算)
- 経費:大部分は人件費、他PCやソフトなどの備品系
そして、その純利益を増やす方法として主に下記2つがありました。
- 売上(制作費)を増やす
- 経費(人件費)を減らす
売上を増やすって?経費を減らすって?
具体的に何をすればいいの〜!
今回はこの2点についてもう少し掘り下げていくよ!
方法①:売上を増やす
さてまずはこの図の売上(制作費)を増やす点についてお話しします。
デザインの質を上げる
売上=質×量
量(数)が同じでも質(単価)が高ければそれだけ売上は上がりますよね。
つまり、デザインの質を上げることは1つのデザインあたりの単価を上げることを指します。
制作はどうしても時間勝負になる面があります。
1日24時間以内にできること=売上の上限になってくるので、単純に量に頼っているとどこかで限界が来るんですね。
なのでその上限を超えるために、質を上げて1つ1つのデザインを高く売る必要があります。
質(単価)を上げるには
では質(単価)を上げるにはどうすれば良いんでしょう?
これは会社によって違うので抽象的なことになってしまいますが、私たちの本業である制作の仕事においてお客様に価値を認めてもらうことです。
「この会社にはお金を支払う価値がある!」と思ってもらうことだね!
つまり、このゴールを達成し、クライアントの売上を上げたという実績を作ることに他なりません。
お金を支払う人に、会社の価値を認めてもらう
いわば“希少価値が高い”状態だと、モノの価格は上がります。
【あなたはどのタイプ?】デザイナーレベル別クラス分け一覧
そして、それはあなた自身も同じです。
(“希少価値が高い”状態 = モノ(あなた)の価格は上がる)
クラス分け一覧の記事で上記のことをお伝えしましたが、これは会社も同じです。
あなたの収入を上げるために、会社に「あなたには価値がある!」と思ってもらう必要があるのと同じように、
会社の売上を上げるのには「あなたは価値があるぞ!!」と判断する人にとって貴重な存在だと思ってもらう必要があります。
「この制作会社に依頼すると (事業)会社の利益が増えるぞ!」と判断してもらう必要があるってことだよ
その方法論が会社によってマーケティング、ブランディング、広告運用、経営etc.と会社の強みとするものによって異なりますが、共通なのは「事業会社の利益に結びつくこと」です。
なので、質(単価)の高いデザイン=(事業会社の)利益に結びつくデザインとなります。
量(数)を増やす
さてもう一つの項目は量(数)です。
デザインの量を増やすことは、字のままより沢山作ることを指します。
ただ先ほどお伝えした通り、1日は24時間しかないので
24時間で作れる量=物理的な限界量になり、売上の頭打ちになってしまいます。
この問題への対応策は「①制作会社の場合」と「②インハウスの制作部門」の場合で異なるのでそれぞれ分けてお話しします。
1日は絶対24時間であり完全に解決はできないので、今回は
こうしたら良いという推奨例を挙げます!
①制作会社の場合:作業の自動化
- テンプレート(標準)化
- CMS化
デザインでもマーケティングでもブランディングでも、どの知識であれある程度ノウハウ貯まってくると共通項が見えてきます。 ”その共通部分をテンプレート化させて、必要な部分をカスタマイズできる”というサービスを作ることで、共通部分にかかる時間を短縮したり、誰でも扱えるようにすることが出来ます。
ちなみに、この解決法は「製品・テクノロジーのライフサイクル理論」 に基づいて話しています。
製品・テクノロジーのライフサイクル理論とは
新しい技術や製品は最初は人の手によって技術を高めたり製品を広めたりする必要があるが、
最終的にはそれらの仕組みが自動化(テンプレート化)される可能性が高いとされる理論
実際は”自動化される可能性がどれくらいあるのかを探る理論”ですが、簡略化のため”可能性が高い”と断定しますね
例えばiPhoneの場合、最初はAppleが「スマートフォンってこういうものだ!」「iPhoneではこういうことができる!」とApple側の企業努力で認知が広げられてきましたが、今はもう皆「そんな事知ってるよ!」となっていますよね?
なのでAppleは今はそんなプロモーションはしていません。
また発売当時はまずタッチやらスワイプやらそれまでの折り畳み携帯とは違う操作方法で、使い方を知るところから始まりました。
でも最初の方に興味を持った人たちによって「こう使うといいよ!」というノウハウが広まり、今では「iPhoneってこう使うもの」と誰でも使えるようになっています。
このように、ある程度その知識なり技術なり人の手によって高められたものは、最終的にテンプレート化できることが多いです。
誰でもわかる、使えるようになる、ということだね!
そしてこれは、デザインでも同じことが言えます。
例えば写真加工アプリに「フィルター」ってありますよね?
あれもPhotoshopで一から自分で明るさや色味補正などしなくてもフィルターとしてある加工方法をテンプレート化したものです。
自動化して効率よく進めよう
作業の自動化について、まとめると下記となります。
- 1つのデザインにかかる時間を短縮する
知識や技術の基本的な部分をまとめてテンプレート化すれば
わざわざ自分たちで1から作る必要はなくなる
- 1つのデザインを誰でも作れるようにする
テンプレート化できるものを増やして、誰でも扱えるようにすれば
新人のように業務に詳しくない人でも仕事することができる
このテンプレートを集めてCMS化しクライアントに販売すれば
そこでの利益を作ることもできますね!
このように、24時間という時間を増やすことはできませんが作業時間の短縮や誰でも出来るようにすることによって時間内に作れる量を増やすことが出来ます。
②インハウス制作部門の場合:流通量を増やす
さて量(数)を増やすという点について、事業会社のようなインハウスの場合は制作会社とビジネスモデルが異なるので対応策も変わってきます。
インハウスの場合、デザインするのは自社商品関連のみで制作数自体は少ないですよね。
なので、インハンスの方達はデザインの制作数を増やすのではなくデザインの流通量を増やすという方向性になります。
デザインしたサイト,LPバナー,それらをより沢山の人に見てもらう!ということです
流通量を増やす方法として、具体的には広告や発信(コンテンツ、SEO)の量を増やすことです。
※もちろん、ただ闇雲に増やすのではなく「どのデザインだとよりリーチする(増える)のか」という法則を考えた上でです。
目の前のお客様に集中する
では、どのようなデザインだとよりリーチするのか?というと、これも会社によって何をどうするかは異なるので何とも言えませんが、共通するのはユーザー(一般消費者)と向き合うことです。
デザインしたサイト・LP・バナー・それらをより沢山の人に見てもらう!ということです
制作会社で働く中でよく「今トレンドって何ですか?」「競合他社はどんな感じですか?」という相談を事業会社側から頂きますが、重要なのは会社のお客様がどう思うかです。
そもそもトレンドに左右される集客方法はお勧めしません。
競合他社がこうしてるからうちも変えます!とやってるとあなたの会社が伝えたいメッセージ、いわゆる軸がブレてしまいます。
トレンドや競合他社という自社以外のことに目を向けると、その視点からズレてしまいます。
つい周りがどうしているのか気になっちゃうんだよね…
お金を支払ってくれるのは競合他社ではなくお客様なので、お客様と向き合うことが第一だよ
アルゴリズム変わったとか技術面のトレンドは追った方がいいと思いますが、一番大切なのはあなたの会社がお客様がどう思うかです。“どの広告、発信だとあなたの会社のお客様にささるのか”というあなたの会社でなら通用する勝ち筋を見つけるのが一番重要なんです。
流行ってるから周りもやってるからといっても、自分のお客様にささらなければ意味ないもんね
その通り!あくまで周り(競合他社)は参考程度にして、今まで自分たちがやってきた事・施策を振り返って何をどうするか考えた方が◎
方法②:経費を減らす
さて次に、この図の経費(人件費)を減らす点についてお話しします。
※制作会社の経費の大部分を占めるのは人件費なので、今回は人件費に焦点を当てて説明します。
経費、つまり人件費を少なくするといっても作る人自体が少なくなると「量(数)」が稼げなくなるので人件費自体を減らすことはできません。なので、一つの案件に対して掛かる人数を減らすという方法で間接的に人件費を減らしていく方法になります。
じゃあ一つの案件に対して掛かる人数を減らす…言い換えると質が高いものを作れる人を増やすにはどうすればいいんでしょう?
その方法は、主に以下の2つです。
- 採用:即戦力になる人を雇う
- 教育:即戦力になるように育てる
採用:即戦力になる人を雇う
つまり、質の高い人を引っ張ってくるということですね。
これが一番早いし確実ですが、問題は良い人は市場に出回っていないという点です。
そもそも即戦力になれるくらい仕事ができる人ならもう企業のいいポジションにいます。
フリーランスなら既存のクライアントがいます。
引っ張って来れたら確実だけどそもそも引っ張ってくるのが難しいんだよね
それでも即戦力、つまり今欲しい人材を選びたいという場合は各々のレベル感に沿った採用活動が必要です。
雇用形態(単価)で見るデザイナーのレベル感
正社員以外の人材のレベル感について、雇用形態別の印象が下記になります。
個人的偏見強めですが笑、現場で新人教育なりレビューなりしながら把握してきた感覚なのでおおよそは当たっていると思います
割と管理職などの上の役職者の方もこのレベル感の認識が甘い方が多く「採用してみたら違かった」という声も聞きます。
なので、採用時は下記の流れが即戦力(今欲しい人)を採用する方法になるかと思います。
- 上記のレベル感を認識した上で
- 会社にとって”今どのレベル感の人材が必要なのか”を明確にして、
- そのレベル感をもつ人材なのかを、面談&ポートフォリオで判断する
面談時の注意点
意外とデザイナーの面接でもディレクターや管理職の方しか参加されていない場合がありますが、
私は現場のデザイナーを同席させることをお勧めします。
後ほどの記事で詳しくお伝えしますがデザイナーに重要なのは過程です。
完成までにもしかしたら他のデザイナーのフォローがあったかもしれないし
ディレクターがたくさん修正指示を出したかもしれません。
ただそれは職務経歴書やポートフォリオだけで見抜くことは難しいんです…
この”過程”というのはポートフォリオだけで判断することが難しいので面談で判断する必要があり、そしてこの作る過程というのは当たり前ですがデザイナーの方がわかっています。
なので採用面談の時は現場のデザイナーを同席させることを私は推奨します。
教育:即戦力になる人を育てる
即戦力になる人を引っ張って来れないなら、 即戦力になる人を育てるしかありません。
ただ名プレイヤーが名監督になるわけじゃないのと同じで、作るのが上手な人と教えるのが上手な人は違うんだよね。ここも企業が人材育成に躓くポイント。
教育する方法としては下記の2つがあります。
- 属人的な方法
つまるところ人に依存する方法のことです。
先輩のOJTみたいに個人的なものから、社風・風土のような全体的なものがあります。
- 標準化された方法
人に依存しない、つまり人以外のものが教える方法です。
「このレイアウトだと文字が目立ちやすい」「数値分析する際にはこの項目から確認」などのように、仕事ができる人が持つ知識や技術をマニュアル化して誰でも知る事が出来るようにする方法です。
勉強会などもこれに含まれます。
今回のまとめ
今回はビジネスクラスの方に必要なweb制作業界のビジネスモデルについて、制作会社に焦点を当てた純利益の出し方についてお伝えしてきました。
本記事のまとめはこちらです。
- 売上を上げる→質×量を増やす
- 質を上げる:クライアントの利益に結びつくデザインを作る
- 量を増やす:作業を自動化させて効率を上げる
- 経費を減らす→採用と教育を強化する
- 採用:即戦力を見つける
- 教育:即戦力になる人を育てる
会社で働いていると、デザイン以外の書類仕事など会社独自のタスクがありますよね。
それらの仕事が会社のどんな分野に関わることなのかを把握しておくと先回りして動くことができ、余裕を持って仕事することができますよ!
是非実際働くときに意識しながら行動してみてくださいね。